DEPO LABO WEDDINGが、ブライダル業界のプロフェッショナルに取材を行い、実際にウエディングの現場で活躍する方々の、リアルな魅力をお届けします。
シリーズとしてお送りする、第二回目に特集するのは、フォトグラファーで映像ディレクターのKEICOさんです。
女性らしいふんわりした風合いの中に、ハッとさせる瞬間を捉えたKEICOさんの写真と動画たち。
KEICOさんは、結婚式当日を迎えた新郎新婦が、朝、自宅で過ごしているシーンから撮影するという、とても面白い試みをされています。
プライベートな空間での撮影を実現する為に、どのように新郎新婦と距離を縮めているのか。
「新郎新婦とは、フォトグラファーとして関わるというよりも、生涯の親友になりたい」と語るKEICOさん。
そんなKEICOさんの魅力を、同じ映像のプロフェッショナルとしての視点から、お伝えします。
目次
▼KEICOさんプロフィール
▼結婚式の日を迎えた朝、新郎新婦の家で撮影すること
▼新郎新婦と生涯の親友になるために撮る
▼KEICOさんの撮影スタイルと作風の特徴(バランス感覚、女性的と男性的の中間、自然体と演出の中間)
▼動画をやっているからこそ描けるストーリー性
▼KEICOさんプロフィール
KEICO PHOTOGRAPHY代表、フォトグラファー、映像ディレクター。
16歳のころから写真を始め、2010年某ウェディングフォト会社に入社。
5年間、東京都内を中心に、結婚式撮影・ロケーション撮影・スタジオ写真(キッズ・マタニティ・家族写真等)の経験等を積んで、2015年独立。
現在は、フリーランスフォトグラファー兼シネマトグラファーとして、マタニティ・キッズ、カップルやウェディング、住宅・インテリア撮影など、「人々の人生を『写心』残す」ことをテーマに映像活動をしている。
▼結婚式の日を迎えた朝、新郎新婦の家で撮影すること
KEICOさんの撮影スタイルを伺って、まず驚いたのが、「結婚式の日を迎えた朝に、新郎新婦の家で撮影する」ということでした。
そんなプライベートな空間での撮影を実現するためには、新郎新婦にかなり心を許してもらう必要があります。
私は、男性の映像ディレクターということもあり、朝の時間の新婦のお支度の都合もあるので、とても神経を使う環境だと思うのです。
それをKEICOさんはさらっとやってのけてしまう。
初めて新郎新婦の家で撮影をしたきっかけは、友人の結婚式の撮影をお願いされたことだといいます。
その時の結婚式場の制約が厳しく、メイクルームでの撮影がNGとなってしまいました。
最も新郎新婦のドキドキ感や緊張の仕草が現れるメイクシーンに、ふたりだけのドキュメンタリー性を見出す撮影に力を入れていたKEICOさんにとって、頭を悩ませる事態となりました。
そんなときに思いついたのが、「結婚式場に出発する前の自宅で撮影する」ことでした。
限られた制約の中で、できる限り、新郎新婦にとって価値のあるものを残してあげたいという想いから生まれた撮影スタイルだったのですね。
▼新郎新婦と生涯の親友になるために撮る
プライベートな空間での撮影を行うためには、まず被写体となる新郎新婦と、本当の友達になる必要があります。
新郎新婦と友達になるうえで、KEICOさんはどのようなことを気を付けているのでしょうか。
新郎新婦から問い合わせがあったら、必ず当日を迎えるまでに顔を合わせるようにしているそうです。
遠方で予定が合わない場合には、skype(スカイプ)でやりとりをします。
対面での打ち合わせでは、趣味や新郎新婦の関係性、お互いの仕事の話など、いたって普通の話をして、空気を和ませるところから始まります。
そして、新郎新婦が結婚式で何を叶えたいのかという想いを汲み取り、それにマッチした提案を心掛けています。
また、問い合わせの窓口や、質疑応答の手段としてLINEを活用しています。
わからないことがあったら気軽にいつでも聞けるので、まさに友達同士になる環境を作っていることが、新郎新婦との信頼関係を築く秘訣になっています。
KEICOさんは、「結婚式の撮影は、新郎新婦と生涯の親友になるきっかけでしかない」と語ります。
つまり、結婚式の撮影をきっかけとしてお互いに親友同士になって、結婚以降の出産や七五三などの人生の節目に、フォトグラファーとして立ち会えるようになることを目指しているのです。
結婚式の撮影だけで完結するのではなく、生涯にわたって寄り添える存在になることを思い描いているスケールの大きさが、KEICOさんの魅力なのです。
▼KEICOさんの撮影スタイルと作風の特徴
「結婚式での撮影では、自分は空気のような存在になって、自然体のふたりを撮ることを心掛けている」と、KEICOさんは語ります。
撮られていることを忘れさせるような立ち振る舞いで、時には、着席しているゲストに混じり、ゲストの目線で撮影することもあるといいます。
特に注目すべきだと思ったのは、新郎新婦がふたりでいる時だけに見せる、ふとした表情を切り取る、繊細な肌感覚です。
写真を見るだけでも、その一瞬の表情を撮るために、極力演出をかけずに自然体を心掛けているのが伝わります。
もともと、KEICOさんが写真を本格的に始めたのは、写真部に入部していた高校生のときです。
その当時を振り返ると、「話をすることが苦手で人見知りだった私にとって、写真が唯一の自己表現の方法だった」と語ります。
特に人を撮影するということにおいては、どうしても被写体となる人とコミュニケーションを取る必要があります。
今となっては、新郎新婦と親友になる関係性を築くほどにコミュニケーションを楽しんでいるKEICOさんですが、空気のような存在となって一定の距離を置き、自然な姿を撮影するスタイルには、高校生時代のKEICOさんらしさを感じさせます。
そしてなにより、決して背伸びをせず、KEICOさんが一番自然体になれるスタンスを保つことが、KEICOさんにしか撮れない自然体な表現につながっていると思います。
どんなところにも溶け込める「無色透明」がKEICOさんならではのカラーなのです。
「ふたりが写真を見返したときに、この時はこんな気持ちだったねと、話ができる写真づくりを目指している」と語るKEICOさん。
撮影が終わって、写真が新郎新婦の手元に残ったあとの事に意識を置くスタイルはKEICOさんならでは。
作品に宿る、このあたたかさのようなものは、KEICOさんが徹底している自然体のなかにこそ生まれるのです。
しかし、意外な言葉をKEICOさんから聞きました。
「光が綺麗な場所でポーズ写真を撮る時は、数センチ単位で立ち位置を調整したりもします」
なんと、自然体にひたすら徹すると思いきや、ひとたびポーズ写真となると、非常に繊細でシビアな演出力を発揮させているのです。
自然体とシビアな演出という両極端ともいえる撮影スタイルの切り替え方が、絶妙なバランス感覚を持って、作品全体に抑揚をつける。
それこそが、KEICOさんの作風の大きな特徴なのです。
▼動画をやっているからこそ描けるストーリー性
2015年に独立をしてからはしばらく、ブライダルの撮影からは離れていたKEICOさん。
再びブライダルの世界に戻るきっかけは、動画制作の仕事だったと言います。
動画は、写真を撮る時と使う脳みそが少し違います。
写真は、一瞬を切り取ることにすべてを懸けることが多いのですが、動画というものは、時間と流れがあるので、複数のカットの組合せに意図を持たせる必要があります。
動画を描くうえで重要なのは、ストーリー性を持たせることです。
KEICOさんは、この動画制作でのストーリー表現が、写真の作風に大きな影響を与えたといいます。
「時間の前後の流れやストーリーを感じさせる写真だったり、フレームの外を想像させるような写真を撮るようになった」と、作風の変化について語るKEICOさん。
常に現状に満足せず、絶えず新しいことを吸収して進化を続けるKEICOさんに今後も期待したいと思います。
まとめ
個人的に面白いと思ったのは、KEICOさんの撮影時の着眼点が男性的であることでした。
女性で、自然体を大切にする撮影スタイルとの事だったので、ふんわりとした印象の強い写真かと思っていましたが、新婦の胸元やうなじを撮る着眼点に、男性的な色気を感じました。
要するに、男が凝視するポイントを狙っているところに、男として共感しました笑
KEICOさん自身も「ふんわりしているけどセクシーなものを撮るのが好き」とおっしゃっているので、あながち間違っていないのかもしれません。
私も、男目線で見たときに色気を感じる部分を強調させて撮影するので、意外なところで共感できたのがおもしろかったです。
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