前回の記事では、 DEPO LABOがなぜウエディング映像を作るのかという理由について書きましたが、 今回は、なぜ在日コリアンの方を専門にして ウエディング映像を作っているのかについての理由を書き記します。
私が、韓国の母と日本の父の間に生まれた、 よろこびや切なさについてや、 在日コリアンの方がどんな結婚式を挙げられているかについても触れています。
目次
▼韓国と日本の橋立てになる仕事がしたい
▼自分と同じような境遇の人たちの存在
▼在日コリアンの文化をアジアの文化として残したい
▼在日コリアンの方の選択肢を増やしたい
韓国と日本の橋立てになる仕事がしたい
以前書いた記事にも共通している部分もありますが、 在日コリアンとしての部分にフォーカスを当てていきたいと思います。
【参考記事】 DEPO LABOという映像ブランドを作った6つのきっかけ
わたくしDEPOは、韓国の母と日本の父の間に生まれました。 出生は、韓国のソウル市内なのですが、生活の拠点は、ずっと東京でした。
日本の父の元に、母が嫁いでくるという形であったため、 私は日本の国籍で、地域の日本の学校に通うことになりました。 私の周りには、自分と似たような境遇の人はいなかったのですが、 特にいじめられたりすることもなく、平和に楽しく暮らすことができました。
それは、 母がすすんで私の友人たちとコミュニケーションを取ってくれた部分がかなり大きかったと思います。 母が異文化の環境に溶け込んでくれたので、友人たちも普通に母と話したりしていました。
夏休みなどの休暇があるたびに、 家族で韓国に母方の祖母のところへ遊びに行っていました。 小学校のときは、 ただ飛行機に長時間乗ること(2時間だけど子供にとっては超苦痛)が嫌で仕方がなかったのですが、 韓国に着いてしまえば、 「ビビンバ美味い!」「冷麺美味い!」とか言いながら、異文化を謳歌していました。
次第に成長するにつれ、 韓国と日本の間に、過去にどんなことがあったのかを次第に知る機会が多くなりました。周囲の人からは、 「スポーツで韓国と日本のどっちを応援するのか」 「島の領土についてどう思うか」 というようなことを聞かれることもあり、 もの思いにふけっていました。
特に、 「スポーツでどっちの国を応援するのか」については、 ポジティブに捉えれば、どちらも応援することができるということだと思います。 どちらの国も、事実上自分にとっては故郷なのですから。 実際当時は、「好きな選手がいるほうを応援する」と濁していましたが…。
自分は、 「日本人でもあるし、韓国人でもある」 とも言えるし、 「日本人でもないし、韓国人でもない」 とも言えることに、 おもしろさを感じつつも、切なくもありました。
さらには、 某ネット掲示板の韓国と日本について、 スパイシーで過激な内容を、 感情を逆なでされながらも無理やり見るという、 罰ゲームみたいなことをやっては、「ぐぬぬ…」と思っては、戦争が終わって長い年月が経った今でもなお、切ない状況になっていると感じ、悔しい気持ちになりました。
戦後、韓国は、日本のドラマ・映画・音楽などの文化が、 国内に広まることを強く規制している時代がありました。
確かに、 過去の出来事や領土の問題などに、お互いがどのように対処するかは、 先人から世代を引き継いだ私たちに課せられた課題ではあります。
しかし、 そのなかで、ネガティブな感情に支配されるあまり、 相手の文化やおもしろいところに気づけなくなってしまうのは、 あまりにももったいないと思うのです。
過去の宿題は残っていても、 日本人がキムチ食べたり、韓国人がラーメン食べに来たり(食べ物ばっかりですね)、 お互い国で流行ってる音楽を聴き合ったりするのが自然な姿じゃないかと思うのです。 そうこうしているうちに、 将来は、韓国と日本の橋立てになるような仕事がしたいと思うようになりました。
自分と同じような境遇の人たちの存在
フリーの映像ディレクターとして独立してから、 日本で活動されている韓国のフォトグラファーの方(写真日和の鄭光喆さん)と出会いました。
私の生い立ちを伝えると、興味を持ってくださり、 「ちょうどいまウエディング動画が作れる人を探している」ということで、 なにか力になれればという形で、ご一緒させていただきました。 (今でも仲が良く、現在、彼の娘さんの為の動画制作ワークショップをやったりしてます)
そこで初めて、 在日コリアンの方のウエディング映像を作らさせていただくことになりました。 フォトグラファーの方のご友人ということもあり、 何度かミーティングを行い、いろんなお話を伺いました。
在日コリアンスタイルの結婚式があげられる会場や、 どこのレンタル衣装がいいとか写真屋さんがいい等の情報は、 在日コリアンの方々のコミュニティ内での口コミで共有されていることを知りました。
「いままで日本式の結婚式の撮影しかやってないんですよね…」 と伝えると、 「たぶんびっくりしますよ笑」 と言われ、そうなのか…と思いつつ挙式当日を迎えると、 未知の空間が広がっていました。
いままで日本のあらゆるスタイルの結婚式に立ち会っていましたが、 そのどれとも違う世界で、驚きました。 韓国の伝統衣装を身にまとって、 披露宴を中心に組み立てられていて、仲間や家族とのつながりを重視している印象を持ちました。
朝鮮系の学校を卒業した世代の違う方々全員が校歌を歌う時間、 祖父母に感謝を伝えるセレモニーが設けられていて、 世代をまたいだ同じコミュニティの交流や、 人生の先輩へのリスペクトをとても大切にしていることが伝わってきました。
日本や韓国の結婚式とも違う、 独自のスタイルが築かれていることに強い魅力を感じました。
在日コリアンの文化をアジアの文化として記録したい
そのあと、 日本の方とのご夫婦の方など、 何組かの在日コリアンの方のウエディング映像を制作させていただきました。
そのなかで、とても印象的な新郎のスピーチがありました。 「今日のこの披露宴は、日本式でも韓国式でもございません。」 この言葉を聞いた瞬間に、 「日本人でも、韓国人でもない」と切なく思っていた少年時代の自分と、 つながったような感覚になりました。
そういった結婚式に関わらせていただき、 在日コリアンの方々が、 長い間、自分たちのコミュニティのなかで、 独自の文化を作りあげてきたのだということを知りました。
その文化を、 韓国と日本のあいだの視野で狭くとらえるのではなく、 アジアの文化のひとつとして向き合いたいと考えています。 いつの日か、そういう文化があるのだと、 当たり前に言えるようになったらいいなと思っています。
在日コリアンの方の選択肢を増やしたい
新郎新婦とミーティングをした際に、 結婚式にまつわることは、 同じ境遇の方々とのコミュニティ内で、 口コミでほとんどを決めていることを知りました。
その話を聞いた時、 あまりにも新郎新婦が選べる選択肢が少ないのではないか、 という印象を持ちました。
沢山のプロフェッショナルがいる中から、 本当に納得のいくものをセレクトして、 自分たちならではの形を作っていく自由さは、 あるべきものだと思います。
特に、ウエディング映像の分野では、 「在日コリアンの方の撮影も対応できる」 と謳っているいるところはちらほらありますが、 「専門」と銘打ってやっているところは見つけられませんでした。 それがないのならば、作ればいい。
在日コリアンの方が選べる選択肢をひとつでも増やしたい。 それが、 在日コリアン専門のウエディング映像ラボとして、 DEPO LABO WEDDINGを立ち上げた想いです。
DEPO LABO WEDDINGが、 在日コリアン専門のウエディング映像ラボである4つの理由
- 韓国と日本の橋立てになる仕事がしたい
- 自分と同じような境遇の人たちの存在
- 在日コリアンの文化をアジアの文化として残したい
- 在日コリアンの方の選択肢を増やしたい
やはり一番大切なのは、「誰が作るか」。 そこに意味を感じてもらうことを目指して、 DEPO LABO WEDDINGは、 在日コリアンの方々に寄り添った映像を提案していきます。
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